原野商法の被害者が
なぜ再び測量商法などに
だまされてしまうのか
原野商法の被害にあった人たちの 多くはー時的な被害を実感している
のであって、自分の土地は本当は価 値があるもので「いつか必ず値上が
りする」と心の片隅で信じたり、ワ ラにもすがる思いにとらわれていたりするのだろう。それも無理はない
話だ。なけなしの老後資金をだまし取られ、家人にも打ちあげられず
悶々としているとしたら、たとえ元 金の7、8割でも取り戻せるという
程度の話であっても、案外簡単に のってしまうかもしれない。
しかし、冷酷なようだが、あえて次のようにいわざるを得ない、そのように事態が好転することはほとんどないのだということを。「土地は絶対に値上がりする」「不動産はもうかる」などという考え方はあくま
でー面的な真実で、他面にも真実が あることをぜひ考えてほしいのだ。
東京の地価暴騰は記憶に新しい。し かし、高くなりすぎた土地を買う人
がいなければ、東京周辺でさえ値くずれがおこる。
原野商法とはー万円の土地を百万 円で売りつけるようなものだから、
元を回収するためには地価が百倍に値上がりしなければならない。そしてそれは、文字どおり万にーつの幸
運なめぐりあわせでもないかぎり、 不可能なことなのである。
千歳空港周辺にはこんな例もある のだ。 昭和四十年代終わりごろ、「このへんは将来空港の施設になる。いずれ国に買収されるが、そのときはい
いなりの値段で買ってもらえる」という話で、約二百六十名が細分化さ
れた土地を買った。価格はだいたい2万円/坪くらいだったという。
空港拡張の話は事実だった。北海道開発局がそのために買収を開始したのは昭和五十年代はじめ。だが、その買収価格はニ千円ノ坪程度で
あった。土地の所有者たちは当然納 得しなかった。買ってから四、五年
たっているのに、「いいなり」どこ ろか十分のーの値段で買収するとい
うのだから、そのときのおどろきは 大変なものだったろう。
結局、この買収にはほぼ十年の歳月を費やすことになった。空港の拡
張計画もその間延期された。最後まで買収に応じなかった六名の土地は収用裁決まで受けることになってしまった。その収用価格は、五千円/坪程度であったという。
買収手続きのために空港公団や北 海道庁は、関東、関西から九州にま
で散在する所有者との交渉を十年間 にわたり続けなければならす、それに費やした経費は買収した土地の価
格全額をはるかに上まわったーー見方を変えれば、現実の土地の値段は
それほど安かったーーというものだった。
原野商法の被害者が「ワラにもす がる」思いであることは、よく理解できる。被害者仲間が高値で処分できたなどという噂(文字どおりただの『噂』であることがほとんどなの
だがエシを耳にすると、自分のとこ ろも必ずーと思い込みたい心理も
十分すぎるほど理解できるのだ。
もちろん「絶対に値上がりなどし ない」と頭から否定することはでき
ない。だから先にも述べたように、 「文字どおり万にーつの幸運なめぐ
りあわせでもないかぎり、不可能な こと」といっているのだ。
もし、自分は値上がりすることを 信じてその日が来るのをじっと待っ
ているというのであれば、それも一つの方法であろう。ただ、うまい話に安易にのることだけはどうしても
避けてほしいと願う。詐欺師たちが原野を買わせるために言葉たくみに信じさせたように、原野をエサに金
を巻きあげようと言葉たくみに接近 することもあるのだということを、
ぜひ認識してほしいと願う。 二次被害、三次被害を防ぐ方策
は、とりあえずは消費者自身の心構 えしかないのだ。
「原野商法情報センター」は、司法書士有志およそ六十名でネットワー
クを作って情報を交換している。し かし残念ながらセンターに寄せられる情報は、ほとんどが被害にあって
しまった後のものだ。被害を自覚しなければ、被害者自身それが原野商法だったと気づかないからなのであ
る。そしてその被害を救済する手立 ては、今のところない。
それでも、二次被害、三次被害を 少しでも未然に防ぐことはできると
思う。もし自分の原野に買い手が現 われたとき、あるいは転売話がもちかけられたとき、ひとこと相談して
もらえれば他の事例と照らしあわせて「危ない」と助言できるかもしれないし、微妙な場合でも、何と何に
気をつけて何を調査しどこに確認す ればよいのかを助言できるだろう。
「今すぐ」「三日以内に」「先着○名まで」などという口実は、「だれかに相談されたり調査されたりすると困る」と自ら物語っているような
ものだ。本当に契約したい誠実な業者だったら、所有者がきちんと確認
するのを待てないはずはないのだか ら。
*収用裁決 「公共事実に関する土地買収の交渉かまとまらないとき、公共事業主側の 強制買収の申請を収用委員会が決める手続き
*原野商法情報センター=現在は稼働しておりませんが、司法書士大江章夫が承っております。