原野商法の被害者をねらって
新たな詐欺のワナが
次々と仕掛けられている。

二束三文の原野を現地相場の数十 倍、数百倍といったべらぼうな高値 で買わせる原野商法は、昭和四十年 代なかばから昭和五十年代後半にか けて、詐欺師集団の思いのままに展 開されてきた。不幸にしてその被害 にあってしまった人は、全国に十数 万人いると推定されている。
ところが、国民生活センターや消 費者センターなどの相談機関、ある いは弁護士会やわれわれの原野商法情報センターなど専門家の窓口に相 談に来る事例は、氷山のー角に過ぎず、全体のニパーセント程度である ともいわれる。 それ以外の人々は、まったく被害 を自覚していないのだろうか。もち ろんそうは思えない。テレビや新聞 で悪質な原野商法について報道され るたび、「もしや・・・」と不安におそわれる人も多いだろう。あるいは はっきりと被害にあった自覚をもっ ていて、なんとか損害を取り戻そう とやつきになっている人たちもいる にちがいない。
しかし、そんな人たちをねらった 新たな詐欺のワナが、いまこの瞬間 にも、次々と仕掛けられている。

前回の小冊子「しのびよる原野商 法の影」にレポートしたように、「五年後には倍に値上がりします」 と、途方もなく甘い利殖の話として ささやきかけるケースが多い。しか も「そのときにはウチが引き取りま す」とか「転売してあげます」「五 年以内に現金が必要になったら、銀 行利息などよりずっと高い値段で必 ず引き取ります」などの条件を示す のだ。そしてもちろん、この約束が守られたためしはない。その五年が過ぎたころ、ようやく自分がだまさ れていたのではないかと気づく。
だが、中には被害者というはっき りとした自覚をしない人々も多い。 「預貯金の利息はさほどでない。株 はもうかるがリスクも大きい。しか し『土地』だけは、必ず値上がりす る」、そう信じているのだろうか。 あるいはそう信じることによって、 自分が被害者であるという事実から 逃れようとしているのだろうか。 そしてまさにこの心理状態が、ふ たたび詐欺師たちがらけ入るスキな のだ。


詐欺師たちの手口の代表的なもの をみてみよう。
@「測量して境界や面積を確定しな いと…」
いわゆる「測量商法」というもの だ。たいていの場合、転売を斡旋す るとか買い取りたいと申し出たりする。そして、 「現地を調べたが荒れ果てています ね。杭もほとんど入っておらず、わずかに入っている杭も腐っているの で境界もわかりません。きちんと測 量して境界や面積を確定すれば転売 できるのですが」ともちかける。し ぶっていると、
「かりにこのままお宅様が持ってお られるにしても、周辺の所有者の皆 さんからは測量のご依頼を受けてお りますから、登記簿上の面積を皆さ んが実測していったら、おそろくお 宅様の土地はどんどん削られてしま いますよ。あのままではいずれ権利 がなくなってしまうこともあると思 いますが」と、ありもしない話でおどかす。さらに、
「周辺の皆さんの分とー緒に測量で きますから、今だったら経費も安上 がりです」と、いかにも親切心から のようにすすめる。しかも、 「ずいぶん悪質な業者からお買いに なったんですねえ。お気の毒です」 などと慰め(?)たりもするのだ。
こうして測量の契約を結び、五十 万円、七十万円などという費用を取 る。測量費のほかに草刈りや整地の 料金を取ることもある。 測量図面や現場の写真(草刈りも 済んで「00所有地」という看板な どが写っている)を届けてくるが、 本当に測量したかどうか確める証拠 はない。 さて肝腎の転売だが、もともとそ んな話は存在しないので、測量の契 約書をタテに取りあってくれない。
それどころか、ひとしきり金を稼ぐとさっさと会社をたたんでドロンしてしまう業者も少なくないのだ。 測量商法の場合には、転売話がな く単純に測量契約だけでだまされて いる人も多い。大半が「あなたの権 利がなくなる」と、不安感をあおら れてだまされた被害なのである。


A「売り地の広告を・・・」
「00地区は購入希望者が結構出て きているので有望です。あなたが購 入したときの価格の何倍かで売れる 可能性がありますが、会員登録をし てもらえばわが社が発行する情報誌 に広告を掲載しますし、コンピュー タ・サービスのデータの登録もしま す。半年からー年でまちがいなく売れます」といって、数十万円の登録 料を取る。
たしかに広告掲載誌が届けられる が、元の購入価格が相場の百倍以上 という法外な値段だから、購入価格 で売り出したとしても買う人が現わ れるはずがない。
「約束がちがう。売れないじゃない か」と抗議したところで、
「わが社は不動産流通データ・サー ビスをしているのであって、買う人 がいなければ売れない、これが『市 場経済』というものですよ」 などとあしらわれるだけである。 先日話題になった「ジャルス」も、 この手口だ。


B「利益は税金でもっていかれます よ』
「購入希望者から依頼を受けてきま した。しかし、購入価格の倍ですか ら利益も大きく、大半が税金でもっ ていかれますよ。税金対策にちょう どよい土地がありますから、とりあ えずそれを買っていただいて、お宅様の土地が処分できて税金対策がか たづいたあとで、うまく買い戻しますから」
だが、もともとの土地を転売して くれるはずがない。税金対策という のもウソで、結局、原野をもうひと つ余計に買わされてしまっただけな のだ。


C「私も被害者なのですが」
「被害者がー人ひとりバラバラだか ら弱いんです。あそこはすぐ隣のと こまで市街化区域なのに、ウチらの 地区は市街化調整区域ですからね。 売ろうと思ってもとんでもない安値 しかつきませんからね。ですから市 街化区域編入期成同盟を結成して、 ひとつ市に働きかけようと思うんで す。私たち被害者が何人か集まって 事務局を作ったので、あなたも加盟 して、一緒にがんばりましょう」 などと、拠出金をだまし取る。


等々。 これらの手口はほんのー例に過ぎない。しかも、私たちが実例をつか んで分析していくうちに、あるいは あれこれと推理をめぐらせているう ちに、詐欺師たちは次々と新しい手 口を考え、すばやく実行してしまう のだ。彼らは、詐欺のプロなのであ る。 彼らの先回りをする方法は、くや しいけれど、いまのところ考えつか ない。


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